川村ユキハルの毎日2

湘南茅ヶ崎界隈のいつもの暮らしぶり。 仕事の話や思うこと。再び。

インセクト・マイクロエージェンシーの2月2日メルマガ(コラム原稿)

デジタルサイネージ複眼コラム■

前回は、デジタルサイネージが表現できる特徴の大きな部分として
「情報」の要素と「情緒的な導き」の要素があるよ、
そう仕分けするとデジタルサイネージに何の役割を担わせるか仕分けられるよねという話をしました。
(半年前。。個人のブログにアーカイブしています。https://goo.gl/ZF4KVg

今回は「何の役割を担わせるか」は「どの場所で」ということを少し書いてみます。


デジタルサイネージの設置する場所について>

デジタルサイネージは場所に依存する媒体です。
たとえば、お茶の間のTVはその昔一家団欒の中心にありました。
また交通機関の行灯の看板や紙の中吊り広告などはもちろん不特定多数の乗客や
その目的のために往来する人が行き交う場所に設置されます。
駅や電車周りのデジタルサイネージはそれがリプレイスされたものですよね。

ということを考えると、店舗でサイネージを設置する場所が重要なことがよくわかります。
空いてるところに置いておけ!ではせっかくよいコンテンツを作っても
効果的でなかったり、見てもらえるチャンスそのものも厳しいことになるかもしれません。
店舗や施設の空間においてどの場所に設置するかは事前に検討すべきです。
ではどこに置くかなーと。よくよく考えると自然と見えてくるものがあります

例えば、この間GINZA SIXという商業施設地下の化粧品売り場、惣菜売り場をプラプラしていますと
(よく店舗や施設をぶらぶらするのはぼくの趣味)
各化粧品売り場ではモニタをマルチに組んで自社のイメージやブランドロゴ、
パッケージカラーなどを映像表現しています。
惣菜売り場でも自社の料理や素材のよさをシズル感たっぷりにそのイメージを映像化していました。

これらを我々来館者は、通路2、3M先あたりから見て、
ブランドや屋号を認識して「あそこいいね」と棚に向かい商品を手に取り、
また、説明員に相談します。
お分かりのように、近くまでくるとサイネージのメインの役割は果たされたことになります。
この場合のサイネージの役割はテナントがひしめくフロアで自社のブランド自体や商品、
サービスのイメージを訴求してフロア行き交う(フリー客)人もしくは、
目指してくる人に対して認識をしてもらうべく選んでもらうべくアピールをします。
什器の下側だったり、商品ケース後方背面の壁面だったりにモニターは設置しています。
什器の下側はちょっと違いますが、もともと屋号の看板を掲げていた部分にサイネージを設置しています。
屋号の看板の場所、役割のリプレイスされたものがサイネージ面となったということになります。
その昔は商店の評判や歴史、名物商品の特徴がその「屋号の名前の看板」に暗黙知として詰まっているものですが、
(いわゆる老舗店の看板などは最たるものですね)我々はサイネージによってわかりやすく、
直接的にメッセージできることになったということですね。

これは一番シンプルな例ですが、その他にもいわゆる「磁石」としてサイネージを利用したり、
演出中心で展開したり。複合商業施設では共有スペース中心なのでまた役割が違ってきたり、
それぞれ特徴があるのですが、また機会があれば書ければと思います。

ということで、自社の話になかなかいけないですが、また次回!

「牽引する言葉」

<あけましておめでとうございます。今日は1月4日 >

 今日は段ボールの日なので、朝、年末年始を過ごすために各家庭へ運ばれ役割を終えた段ボールが街の角の、もしくは塀がある家(最近は塀のある家は減った)の家主が善意で町内のゴミ置場として設置を許した所定のゴミ置場にわさわさと積まれていました。今年はあきらかに多い、やはり最近はネットで皆諸々買うからかな。

  今年は連日おだやかな晴天に恵まれ、しかも陽が落ち夜ともなれば新しい年の夜の始まりに相応しく空にはっきりとした円環が昇りました。その大きな月は、静かにしかし爛々と白い光をそそいでいます。酔った頭で暖炉の薪を補充すべく庭に出るたび、空を見上げ、いいねえと。溜まった本をソファアで寝て読みながら、うつらうつらするのもまた、お正月の贅沢。

  毎年、今年こそTVで紅白を見ようと言ってるものの相変わらず狭い我が家には大きなテレビなど置く場所もないため昨年も購入を見送り、おかげで静かな年越しであったけども、年が明け、さすがに駅伝は見たくなって、台所用で活躍する小さなワンセグTVを家族3人雁首そろえ覗き込むようにして観戦するのでした。
遊行寺の坂を越え湘南の海岸付近に学生が現れると聴くといよいよ、いてもたってもいられず、いそいそと出かけ颯爽と駆け抜ける選手の美しい一瞬のために旗をふりました。そんなことで3日間があっという間に過ぎました。

 

 <1年の計は元旦にあり。> 

年末年始の間、何かの読みものか映像かに載っていたもので、棋士羽生善治さんが言ってた「初心忘れるべからず」の初心は将棋を初めてさした時のことだけではなく、対局ごとを「初心」と思えると語ったこと。仕事でもなんでも、大きなことを成すためには表向き繰り返し繰り返しのことばかりが続きます。毎回の大きな変化や毎回得るものがあるわけではないでしょう。そんな時でも、いつもフレッシュな気持ちで迎えられる。「初めて会えた」気持ちになれるのはとても重要なことです。そこには発見してやろう、何かを得ようという気持ち、意思があることかと思います。

仕事においては相変わらず「豊かなコミュニケーションの成立」ということで、弊社は販売の現場のコミュニケーションをテーマにデジタルサイネージの事業やそれらアプリケーションの開発をしています。いくつか仕掛かっている仕事がありますが、春に1つ大きなローンチを準備中です。繰り返し繰り返しこのテーマで自問してやり続けていますが、少しまた前進できそうです。なぜなら、今回その取引している方からは、「川村くんは10年前から同じこと言ってたよね。」でこの度の話になっています。詳しくは春にお話しできるかと思います。
てな感じで、今一度「初めてこのテーマに会えた」喜びと興奮と決意を思い直して。「初心忘れるべからず」は今年の僕の言葉。
趣味においてはもう一度山を楽しく真剣に走ることをしたいなあ。また一からやり直し。また具体的に、レースに出場する目標をつくって挑んでいきたいです。これまた一緒。山を走る喜び、ゴールの感動やみんなの笑顔。これこれ。忘れないように。

とにかく今年もまた新たに会える人やいつも仲良くしてくれる皆さんと大きく笑い、泣き、感激する年にしたいと思っています。いつも言ってるように、美しいものは声を出して美しいといい、楽しい時は楽しいなあと言う。とても重要なこと。
そして今年の年末には「ああ、よかったよな今年も」とお酒を飲みたいです。

会いに行きます。今年も宜しくお願いします。

 

 

インセクト・マイクロエージェンシーの8月9日メルマガ(コラム原稿)

デジタルサイネージ複眼コラム>


色々と今まで、企業や自治体のコンサルテーションや導入、運営、講演を通じてお話をしていることを少しづつコラムとして書いていこうと思います。「今」思考し実践していることなので、書き進めていくことで考えの揺れなどはあると思いますが、そこは「ライブ感!」と思って楽しんでいただければと思います。ではでは。

 

<店舗のデジタルサイネージ

 

店舗のデジタルサイネージについてはざっくり、webサイトのように自社のオウンドメディアとして機能すると考えます。

弊社では、講演やコンサルティングで、サイネージの大きなコンテンツの役割として
(1)情報(インフォメーション)
(2)情緒的な導き(エモーショナルガイダンス)
という2つの要素がありますと、よくお客様にご説明いたします。
(1)については「営業日/時間」から始まって、「キャンペーンのお知らせ」など具体的な<言語化できる>伝えたい情報を指します。(2)については耳慣れないかもしれませんが、たとえば、私たちが喫茶店でお茶を飲む場合、その一杯の対価にはもちろん飲み物としてのコーヒーそのものと、店舗で滞在する間に感じとれる空間(調度品や座る椅子テーブル、調度品、照明や壁紙。コーヒーをドリップする機材、また香りなど)の価値も含まれていることはわかると思います。
それはお肉屋さんでも八百屋でもはたまた家具屋さんでもいえることです。このようなお店の振る舞いにおいてもデジタルサイネージは機能することができるのです。

これは「ブランディング」と「プロモーション」という意味で考えても理解することができます。経営者からすると、明日のために投資することは = 「ブランディング」。今日のために、お客様に対して背中を押したい(購入してほしい)と投資することを =「(セールス)プロモーション」と考えるとわかりやすいでしょう。

このように捉えてみると、店舗に来ていただいたお客様に対し、情報の要素だけではなく、再来店もしくは、新たなお客様をお連れいただくために、ロイヤリティをあげる「情緒的な導き」の要素も勘案した上でデジタルサイネージコンテンツをプランすることは重要ですね。ということで、次回は弊社の事例をあげながらお話を進めていこうと思います。(続く!!)

会社が8年目を迎えます

なんだかよくわからないし、誰にも相談できずインターネットで調べた安くて怖そうじゃないということで決めた、横浜の行政書士の方に、この日に設立登記をとお願いして登記したのが2010年の7月7日。

株式会社インセクト・マイクロエージェンシーは7日で8年目のスタートを迎えました。

今これを書いているのは7年を終えようとしている7月6日の夜です。

今日は時間ができたので、1人で茅ヶ崎の初めて行く焼き鳥やさんで日本酒と焼き鳥や、美味しいつまみなど食べながら、カウンターで一人なのでご主人にも声かけてもらいながら、一通りいい感じで酔っ払いました。
そして、気持ち良く台風一過の雲がたなびく月を見ながらが夜道を歩いていたら、ふとコーヒーが飲みたくなって近所のカフェでコーヒーを飲みながら、ひさびさこのブログを書いています。(あとチーズケーキも食べています。)

会社を初めた当初は、広告代理店で得た知識と知見と、自分が思うリテールのコミュニケーションの課題やこうあるべきとした考え方をベースに、受託のコンサルやサイネージの設置運営、コンテンツ制作をメインのビジネスにしていきました。しかしながら、川村商店にするつもりはないので、その知見や課題点をみずからが作るサービス(商品)に投影し、広く使ってもらえるサービス(システム)を提案したくなりました。


もちろん事業や経営を考えた場合にもその必要がありました。
いわゆる投資を受けるベンチャーのようなスピードや派手さはないないですし、また、会社の体力はないので実業で得た手元の利益を少しづつ開発にあてながら、ここにきてやっとサービス(システム)のラインアップをそろえました。それがFLOWシリーズです。

気がついたら7年経っていた。そんな感じです。
もっと開発を速くとか、もっと違うサービスもとか、そのためのキャッシュがもっとあればとか、思えば本当にキリがないですが、独立系の小さな会社が大きなメーカーやITベンダー、メガベンチャーなどの巨人に囲まれて商売する厳しさやちょいちょいある悔しい思い、また思いかけず助けられたことなど。本当に転んだりジャンプしたりしながら様々なサーフェイスのタフな道を走ってきました。
まあ、それを考えるとこの事業のスピード感は結構妥当なのかなと思ったりもします。
楽天的)

少ないながらも弊社の役員、社員、協力してくれる企業、個人のみんなは、本当によく頑張って会社を支えてくれていて、感謝をあげればきりがないのですが、まだまだこれからで、これはもっとビジネスを繁盛させてどんどんフィードバックしなければならない。それが一番と毎晩寝る前に誓っていたりします。


とりまくテクノロジーはどんどん変わっていきますが、
僕らが考えていることの根本は起業当初とまったく変わっていません。
店舗と顧客の豊かなコミュニケーションを成立させる。この部分が
苦しいときも悔しいときも無力感に苛まれるときも推進する原動力と成っています。
言っていることはずっと同じですが、ここにきて少しづつ耳を傾けていただける人が多くなってきました。

今期はもっと試される年なのかと思っています。より一層打ち込んで真摯に課題や顧客に対応して社会に必要とされる企業に近づいていきたいと思います。


クライアント、協力会社、業界のみなさま。また、会社のメンバーとその家族の皆様
一層努力をしていきたいと考えていますので引き続きよろしくお願いいたします。



ちょっと酔ってますが、素直なところです。
しみじみみんなに感謝してる。そんな感じを茅ヶ崎からってことで。


 

 

 

未来を望む色 <会社ロゴ変更と色の話:SIDE-B>

トレイルランナーの友人達からは、当たり前の話だと一蹴されそうですが、そんな皆さんは冒頭スルーしていただいて。。

トレイルランニングという、この素晴らしい自然と徹底的に自分に向き合うエンデュランススポーツで、特に北米で通常とされるレースの制度に「ペーサー」という制度があります。
100マイルや100K超のレースの後半、例えば70K付近から選手と並走して走りゴールまでマネージメントするのがペーサーの役割です。おぶったり、手を引いたりはいけないのですが、コースやサーフェイスを説明したり、走りながら補給を促したり、エイドに先に走って水や補給食を準備し渡す。またレース中、励ましたり、なだめたり、ほめたり、叱ったりしながらゴールを目指します。極限状態の「人間」がでる選手に対し向き合います。

僕は以前2014年に信越五岳というレースで選手で出場した時にもりおくんという友人にペーサーをしてもらったのですが、今でも一緒に練習する時に、そのことをよく話します。お互いいい歳して仕事抜きの走る趣味で知り合った仲間が人間をむき出しにして、信頼だけをお互い頼りにしてゴールできた感激は、やはり格別であり死ぬまで忘れない一つとなりました。

信越五岳トレイルランニングレース2014: 川村ユキハルの毎日
このようなことを、トレイルランナーは必ずいくつか大事に胸に抱えているはずです。
そんなことが多いので僕も年寄りになってもネタは困らないのでひと安心です。あと五百回以上話すでしょう。

 

その時、ゴールした時にペーサーのもりおくんはひどく感動していました。見た目自分を上回るくらいに。そのことは翌年、友達の竹谷さんが選手で出場する時に今度は自分がペーサーとして選んでもらって、サポートすることで真に理解することになります。ペーサーはエージェントとして選手をゴールまで運ぶことが仕事なので、選手とはまったく違う疲労感と充実感、達成感、醍醐味があるのです。とうことで翌年2015年に同じレースでペーサーとしてゴールできた時、真っ先にまず去年のもりおくんの嬉しそうな顔を思い浮かべてペーサーとして色々深く理解したのでした。


夜を越えて山を走る。夜明けのまだ前。漆黒の暗闇からやがて濃い藍色になり出します。まだ光の帯を左右に揺らすヘッドライトをつけ走る二人の息はまだ白く、朝の予感にやっと眠気を通り越したことで、集中した意識にお互いの呼吸が体にしっかり反響します。時折聞こえる鳥や虫の音は遠く、また強く耳に差し込まれます。

 

そして訪れる白が含まれた藍色。本当にもう直ぐ夜明け。

この色。これ。このような中間色を新たなインセクト・マイクロエージェンシーの企業カラー(インセクトブルー)としました。
我々がエージェントとして解決、サポートすることで、明ける未来を望む色として。

今回封筒とかも(やっと!)作りました。今までは茶封筒にゴム印でしたがやっと会社っぽくなるかな。


そこにプリントされてる社ロゴやマークの色はそんなつもりなのだと自分自信が忘れないようにここに記します。

 

 

 





店舗がコミュニケーション手段を取り戻すこと(仕事の事)

インセクト・マイクロエージェンシーは「豊かなコミュニケーションの成立」を社是としています。

創業以来、店舗とお客様の相互に通じ合える豊かなコミュニケーションを提供したいと思っているわけです。で、その「豊さ」を達成するためにベースとなる技術はインターネット常時接続であったり、SNSであったり、IOTとして様々なリアルに溶け込むテクノロジーの組み合わせの技術です。オウンドメディアとしての店舗に対し、デジタルサイネージを創業以来事業としている弊社のベースとなる思想、テーマがここにあります。

メーカーさんのようにディスプレイなどの物を売っているわけでもなく、単なるシステムのSTBを売っている訳ではない。元広告代理店にいたからこそのやりたい(達成したい)テーマなのです。
このことによって、次第に僕らはコミュニケーションの手段が「販売の現場に戻ってくる」と考えています。それはテクニックでなんとか「見た」や「クリックした」とした数字を作ることではなく、販売やサービスの現場がコミュニケーションを取り戻し、簡単に、効果的に、直接お客様と対話することの仕組みや仕掛けを作る事です。

その事により達成することこそが「豊かさ」と考えています。

僕らがコミュティや家族や恋人に対して普通に行うことである、信頼されるように直接顔を見てやりとりをする、振る舞う。また詩的に喜びや素敵なことを伝える事。全てそうだとは言えませんが、直接の場所から遠くなる程、またプレイヤーが間に増えるほどテクニックやロジックで成立させないと(効果をレポートできないので)成り立ちにくいものです。それはいつのまにか手段と目的が入れ替わり現場が置いてけぼりになる事が多いのではとも思っています。みんな薄々気付いてるのですが、でもビジネスが回っているからそのルールに乗ってるのです。うん。わかります。でもそろそろちょっと考えようよ。と思うのです。


直接やることが増えればそんな心配は少しは減ります。(新たな課題もありますが、ウェルカムだ!)また一方で、取り戻す事は、販売現場の方はもしくはセンターでマネジメントする方の面倒が増えることでもあります。今まではあとはよろしく!だったものが自らやらなくてはなりません。もしくは自分の好みで好きにやっていたものがあるルールをもって(ブランディングやレギュレーションなど)やることもあるかもしれません。

そこはなるべく簡単にわかりやすく積極的にできるようにしなくてはなりません。

FLOWシリーズと言うSNS連携のデジタルサイネージCMS、webアプリでインタラクティブアプリケーションを時間軸で配信する思想のshigusaPARTY  チャットボットとサイネージ連携など今後も増えるラインアップでこの課題が積極的に簡単に解決できるようにサービス開発をしています。

店舗とお客様のいい出会い、いい関係がつくれればいいなと。情報が並列する時代にリアルの店舗が果たす役割は今後も非常に大きくなると考えています。

ということで、弊社も体制や気持ちを新たに会社のロゴを刷新しようとしています(予告ー!)

再掲)バリカンについて

✳︎以前ショートノートに載せた話を引っ越し。 サラリーマンの頃の話。
ちなみに最近は気分転換にもなるし理髪店にいっております!バリカンだけども。



大阪支社から 異動してきた若いTは明るく背も高くスポーツマンでイケメンだった。もちろん女子はほっておくはずもない。彼には華があった。男女とも愛される彼にはいつも人の輪ができていた。
いわゆる今でいうところのリア充な人であった。
彼は坊主頭だった。

ある日僕が出社してみると机の上にごろりとバリカンが置いてある。
斜めのシマのT が僕の驚く顔に早速気がついて大股でやってきた。
「兄さん兄さん、これやったほうがいいですよ」
関西弁の彼が大きな体を折りたたんでコソコソと笑顔でこう言う。
「お、そか」「悪いな。」

実はそんな僕も少し前に転職してきて、大手広告会社で大きな仕事ができると気を張って仕事をしていた。
周りは皆流石に優秀であった。楽しかった。ついて行きたかった。当然激務であった。
仕事柄、不規則不摂生の毎日。
髪はというと親のどちらを遡っても遺伝子レベルで髪には将来恵まれない状況は予測できた。
小学生のころは理髪店のおばさんから髪が多く固く、切った髪が指に刺さったわよと言われたことが自慢だった。しかしながら今や30歳過ぎてバサバサと抜ける髪に毎朝戦慄してた頃だったのだ。

そんな僕を見透かしたのか、Tは自分もそうだったのだ、これで救われたのだ。というような
話を矢継ぎに、こそこそと続けて話した。冷やかしでないことはよくわかった。
口元は笑ってはいるが目が真剣だったからだ。

「やったほうがよろしいですわ」

どちらにしても、およそ仕事の机には馴染まない黒く重そうなバリカンをそそくさとカバンにしまい込んだ。

夜遅く家に戻って、そのバリカンをしげしげと眺めたあともう一度考える。
同じ営業チームだが担当の違うT。やってきたばかりで特に話もまだしていないし気心しれたというわけでもなかった。からかってるのだろうか。いやそんな感じでもなかった。
「やっぱりやめたよ。」と言うのも男としていかがなものか、という気持ちになってきた。
 
やってみるか。

深夜、風呂場に大きいビニール袋をバサバサとハサミで開いて敷き、素っ裸になってバリカンをあてた。5mmにセットした。
バサリバサリと髪が落ちていく。

見事坊主になった鏡の僕は毎晩遅くの仕事の疲れもあって、青白く囚人のようだった。
翌朝4歳の息子はパパ怖いと泣いてしまった。妻は笑いを通り越して、ばかねえと呆れていた。

出社すると、すれ違いざまに同僚や先輩や上司、デスクの女性、様々な人が笑って声をかける
「早速仕事で粗相したのか!」「今日謝りに行くのか」「似合うじゃん」「先輩触らせて!」
 
Tも早速僕を見つけた。

「似合いますやん」
「俺もそう思うんだ。ありがとう。」

15年たった今。
昨日も自分でバリカンを使って5mmで刈った。
あい変わらず素っ裸でゴミ袋を風呂場にハサミで開いで敷いて、
滑稽な格好でバリカンの刃をあてている。白髪が随分増えたな。

鏡を見る。
「兄さん兄さん」
Tの声を引き金に思い出す、あの頃の喧騒と混沌、緊張と自由。
仕事仲間との昼夜関わらずの張り詰めた、年中寝不足で楽しかった仕事の日々。